モーターの種類についてわかりやすく説明

「モーターの種類にはどんなものがある?」と聞かれても、具体的な名前までは出せる人は少ないでしょう。多くの人が模型に使われるモーターぐらいしかイメージできないのではないでしょうか。私たちの周りには電気で動く製品や設備があふれていて、そのほとんどにモーターが使われています。しかし、モーターそのものを目にする機会がないため、用途に合わせて豊富な種類が存在しているとは、なかなか思いつかないものです。

今回は初心者にもわかりやすく、主要なモーターの種類について説明します。また、モーターの選び方や、カタログで使われる代表的なモーター関連用語も解説します。

モーターの種類

モーターには非常に多くの種類がありますが、電源に着目すればDCモーターとACモーターに大別できます。DCモーターとACモーターに含まれる代表的なモーターの種類は以下のとおりです。

DCモーター

  • ブラシ付モーター
  • ブラシレスモーター
  • ステッピングモーター

ACモーター

  • 誘導モーター
  • 同期モーター

ここでは、それぞれのモーターの種類について解説します。

DCモーター

DCモーターのDCは「Direct Current(直流)」を意味します。したがって、DCモーターは直流電源で動くモーターの総称です。代表的なDCモーターには「ブラシ付モーター」「ブラシレスモーター」「ステッピングモーター」があります。

ブラシ付モーター

ブラシ付モーターは、界磁束を発生させる方法によって「永久磁石界磁型モーター」と「電磁石界磁型モーター」に分けられます。

永久磁石界磁型モーター

永久磁石を用いる標準的なブラシ付モーターです。ローターの型でさらに細かく分類され、「スロット型」「スロットレス型」「コアレス型」の3種類があります。スロット型は磁気コアに溝を設けることで抵抗トルクを発生させる仕組みです。対して溝を設けないのがスロットレス型で、スロット型よりもローターがスムーズに回転します。コアレス型はコアとなる鉄心がなく、応答性と加速性に優れているのが特長です。

電磁石界磁型モーター

電磁石を用いて界磁束を発生させるブラシ付DCモーターです。基本的には中型もしくは大型モーターを動かすための構造で、電車やクレーン車、エレベーターなどのモーターに使われてきました。近年では、電気自動車やハイブリッドカーのモーターに採用された事例があります。

ブラシレスモーター

ブラシレスと呼ばれるとおり、ブラシがないDCモーターです。ブラシレスモーターはインバータ回路によって回転を制御します。ブラシ付モーターとは逆に、ローター側に永久磁石、ステーター側にコイルを配置する構造です。ローターがステーターの内側を回転するインナーローター型と、外側を回転するアウターローター型、ディスクドライブで使用されるディスクローター型があります。

インナーローター型

小型でも高い出力を持つモーターです。ローターを小さくすることができ、慣性モーメントを抑えられます。これにより応答性と制御性にも優れます。ただし、ローターに高性能な永久磁石が必要なうえに、ステーターの内側に多くのコイルを設置するのは大変なため、コストが高くなりやすいです。

アウターローター型

ステーターの外側にコイルを巻き、それに被さる形状のローターが回転する構造になっています。回転半径が大きくなるため同サイズのインナーローター型モーターよりも高トルクで、薄型化も可能です。振動や騒音が発生しやすく、共振を防ぐために穴加工を施すなどの対策をおこなう場合があります。

ディスクローター型

HDDやブルーレイなどのディスクドライブで用いられる構造です。ディスクローター型では、回路基板にコイルやセンサを設置してステーターを構成します。ロータ側に取り付ける永久磁石は薄い板状でシャフトもないため、装置自体の厚みを小さくすることが可能です。安定的な回転速度で、負荷があまりかからない駆動に適しています。

ステッピングモーター

ステッピングモーターは時計の針を動かすように、一定の角度で回転させるモーターです。ステーター側のコイルに送る電流をパルス信号で制御することによって、回転角度と回転速度を調整します。代表的なステッピングモーターの構造にはPM型とHB型があります。

PM型ステッピングモーター

ブラシレスモーターと同様に、ロータ側に永久磁石、ステーター側にコイルを設置します。ただし、ステーター側のコイルを複数設置する点が大きく異なります。ステーターに4つのコイル、ロータに2極磁石を配置した2相構造※が一般的です。PM型は高トルクで安価なステッピングモーターですが、細かい分解能を持たせるのは困難です。

HB型ステッピングモーター

HB型ステッピングモーターは、ロータにピッチをずらした歯を取り付けて分解能を高めたモーターです。PM型と同じく永久磁石を採用しているため、高いトルクも発揮できます。一般的には2相から5相までで構成し、相の数が多いほど分解能に優れます。
HB型ステッピングモーターは、電流を流す方式によってユニポーラ型とバイポーラ型にも分けられます。ユニポーラ型は制御回路がシンプルで高速駆動向きです。一方、バイボーラ型はユニポーラ型より高いトルクを得やすく、モーター温度が上昇しにくいという特長を持っています。

※相(そう)とは、向かい合った2つの磁極の組のこと。同じ相の磁極は同じ極(N極同士またはS極同士)に磁化する仕組みになっている。

ACモーター

ACモーターとは交流電源で動くモーターのことです。ACは「Alternating Current(交流)」の略称で、電流の向きが周期的に変化する電流を意味します。ACモーターの種類には「誘導モーター」と「同期モーター」があります。

誘導モーター

誘導モーターは、ステーター側の磁場を回転させることにより、電磁誘導を起こしてロータを回す仕組みです。対応する電源の種類によって、3相モーターと単相モーターに分類できます。また、誘導モーターの構造は「かご型モーター」と「巻線型モーター」が代表的です。

かご形モーターは比較的安価で運転設備も少なく、保守や修理が簡単です。それに対し、巻線型モーターは、電源盤や抵抗機、制御器が必要になるなど設備が複雑になります。かご型より高価ですが、加減速での電流変化が小さく、始動時の回転もスムーズです。

誘導モーターはロータとステーターの回転磁界が同期しないため、非同期モーターとも呼ばれます。単純な構造でコストが安く、大型化するほど高効率になるメリットがありますが、すべりによるエネルギーロスや、誘導電流によるロータの発熱を考慮しなければなりません。

同期モーター

ロータがステーターの回転磁界と同期しているモーターです。同期モーターには、ロータに強磁性の鉄心を使用する「リラクタンス形」、鉄心磁場の履歴現象を利用する「ヒステリシス形」、強力なネオジム磁石を用いた「永久磁石形」などがあります。

同期モーターはすべりが発生しないため、一定の回転速度で運用する用途に向いています。ただし、一般的には高価で、制御性も高くはありません。

モーターの選び方

モーターを選ぶ際は、それぞれの仕様と性能を比較することが重要です。カタログを参照、あるいはメーカーに問い合わせをするなどして、以下の項目について確認しておきましょう。

出力回転数

モーターの単位時間あたりの回転数です。回転速度とみなすこともできます。1分間あたりの回転数で表すのが一般的で、単位は「min-1」あるいは「rpm」です。例えば4500min-1(4500rpm)と記載されていれば、1分間に4500回転するということになります。

トルク

モーターが生み出す力のことです。あるいは負荷に耐えられる力ともいえます。モーターの定格電圧や構造、動作原理によってトルクの大きさは異なります。出力回転数が大きいからといって、トルクも大きくなるというわけではありません。

位置決め精度

モーター回転軸を意図した位置に停止させる精度を意味します。細やかな制御が必要な機器において重要な項目です。ステッピングモーターやサーボモーター(エンコーダ付モーター)の分解能や、エンコーダの性能、モーター部品の加工精度などが位置決め精度に大きく影響します。

静粛性

モーター駆動時の静かさのことですが、言い換えれば騒音と振動がどれだけ小さいかを表すものです。モーターが発生する騒音の種類には電磁騒音、通風騒音、機械騒音の3つがあります。騒音の種類ごとに対策が必要です。

コスト

モーター選定では、要件を満たしつつ価格がなるべく安いモーターを選びたいものです。一般的にブラシ付モーターや誘導モーターなどは安価です。ただし、モーターの本体価格だけでなく、部品の修理や交換、メンテナンスなども含めた長期的・総合的なコスト計算が大切です。

サイズ

モーターのサイズは外径、高さ、長さなどで表されます。同程度のサイズでも、モーターの形状によっては収まりの良し悪しがあることにも注意が必要です。

エネルギー効率

モーターにおけるエネルギー効率は、入力電力に対する機械出力の比(%)で求められます。この数値が高いほど高効率なモーターということができます。

寿命

モーターの種類によって寿命は変わりますが、基本的には部品の摩耗や劣化の度合いが影響します。特に軸受の寿命によって左右されるケースが多いです。

代表的なモーター関連用語

モーターのカタログや技術資料等では、基本スペックを表すものとして下記の関連用語が使われます。

トルク

前項でも説明したとおり、モーターの回転によって発生する力です。「起動トルク」「定格トルク」「トルク特性」といった形で表記されていることもあります。トルク特性とは、回転数や電流、周波数などに応じてトルクがどのように変化するかを示したグラフのことです。

定格回転速度

定格出力で運転した場合にモーターが回転する速度です。回転速度は1分間あたりの回転数で表すため、単位は min-1(rpm)を用います。

定格周波数

モーターが使用する交流電源における周波数のことです。周波数とは、1秒間で交流電流の変化する回数(波の周期のセット数)です。東日本では50Hz、西日本では60Hzの周波数で電気が供給されています。

定格電圧

モーターを含めた電気機器類に設定される、安全に使用するための最大電圧のことです。メーカーは定格電圧の使用範囲において、機器の正常な動作と安全性を保証しています。

定格出力

モーターを定格電圧と定格周波数で駆動させ、設計された性能を連続的に発揮しながら安全な運転状態も維持できる出力のことです。定格出力時のトルク・回転速度を、それぞれ定格トルク・定格回転速度といいます。

定格電流

定格出力で運転した場合にモーターへ流れる電流の大きさを表します。単位は A(アンペア)または mA(ミリアンペア)です。

モーター効率

モーター駆動時におけるエネルギー効率のことです。以下の式で表されます。 モーター効率 = 機械出力 / 入力電力 × 100

または モーター効率 = 機械出力 / (機械出力 + 損失) × 100

ただし
機械出力(W) = 回転速度(rad/s) × 回転力(Nm)
入力電力(W) = 電圧(V) × 電流(A)

ミネベアミツミなら用途に合わせた最適な製品をご提案

モーターの種類を知り、それぞれを比較することで最適な選択ができます。直流電源で使用するならDCモーターの中から選ぶことになりますが、用途に合わせてブラシ付かブラシレスか、あるいはステッピングモーターかを選択します。非常に高精度な制御が必要なら、エンコーダやギアボックスが付いたタイプのモーターが最適です。

ミネベアミツミでは給気・排気・冷却用ファンモーターやブロワから、精密機器、情報通信機器、OA機器向けのブラシレスモーターやステッピングモーターまで、多種多様なモーターを製造しています。

自動車や産業機器も含めた幅広い分野で最先端の技術開発もおこなっているため、ミネベアミツミなら貴社のご要望に沿った最適な製品のご提案が可能です。ぜひお問い合わせフォーム」にてお問い合わせください。