エンコーダ付モーターとは? 精密な制御を可能にする仕組みを解説

工業機械や精密機器を高い精度で制御するには、エンコーダ付/センサ付モーターが不可欠です。それらによってモーターの回転を検出することで、自在に動かすことを可能にしています。今回は、エンコーダ付/センサ付モーターの基礎知識に触れた上で、エンコーダについて深堀する形で仕組みや、長所と注意点を解説します。

エンコーダ付/センサ付モーターの基礎知識

エンコーダ付/センサ付モーターは、工作機械や工業用ロボット、OA機器などを精密に動かす目的で幅広く使われているモーターです。ここでは、基礎的な紹介をします。

①種類について

光学式エンコーダ

光学式は、モーター軸にスリット(穴)のあるコードホイールを取り付け、LED光の通過と遮断を光センサで検出する仕組みです。コードホイールによって光パルスを生成し、それを電気信号に変えて回転の位置情報が得られます。信号精度が高く、周辺の磁界から影響を受けないのが特徴です。

磁気式エンコーダ

モーターが回転すると、ローターに取り付けられた永久磁石の磁界分布が変化します。磁気式は、その磁界の変化を検知して電気信号へ変換・出力し、回転位置を検出する方式です。

電磁誘導式センサ

レゾルバとも呼ばれる検出方式です。ローターの励磁コイルと検出コイルを同じ巻数にし、励磁コイルに交流電圧を加えて検出コイルに同じ交流電圧を発生させます。ローターの回転時に励磁コイルへ交流電圧が加わると、励磁コイルと検出コイル間の距離が変化するため、検出コイルに周期が同じで振幅がずれた交流電圧が生じます。この電圧変化から回転角度や回転速度を検出することが可能です。

今記事では、広く一般的に使われているエンコーダの中でも、「光学式エンコーダ」を代表例として、この後詳しく解説していきます。

変異センサ

ポテンショメーターともいい、抵抗体の上を摺動子が動くことで回転位置を検出する方式です。回転角(摺動子の移動距離)に比例する電気抵抗を読み取ります。

➁エンコーダの出力の仕組みについて

エンコーダの役割は、モーターの回転状態を検出してエンコード(encode:符号化)することです。回転状態にかかわる情報には、回転角度(回転量)や回転速度、回転方向、回転位置があります。これらの情報をエンコーダのセンサ素子で検知し、エンコード後に電気信号として出力することが可能です。

③出力方式について

インクリメンタル方式

原点(基準となる位置)からの相対的な位置を測定する方法で、位相が4分の1周期分ずれたA相とB相から出てくるパルス信号の出力波形を見ることで回転方向の把握も可能です。

アブソリュート方式

原点(基準となる位置)からの絶対的な位置、すなわち絶対角度を測定するのがアブソリュート方式で、2進数で表現されたシリアルコードあるいはアナログ電圧で出力されます。

光学式エンコーダに関する基礎知識

続いて、エンコーダの中で最も一般的な光学式を例に、エンコーダの構造と原理を紹介します。

①光学式エンコーダの構造

光学式エンコーダは、発光素子と受光素子、レンズ、コードホイールで構成されています。

発光素子

発光素子には安価な赤外光LEDを用いるのが一般的です。赤外光は波長が長く光が拡散しやすいため、短波長の有色LEDやレーザーダイオードを採用する場合もあります。

受光素子

受光素子には、フォトダイオードやフォトトランジスタ、ICチップを使います。ICチップは、フォトダイオードと信号処理回路をワンチップ化したものです。

レンズ

発光素子とコードホイールの間に凸レンズを配置し、指向性の低い発光素子の光を平行光にします。発光素子にレンズ機能がある場合は不要です。

コードホイール

コードホイールにはスリットがあり、発光素子が放つ光を通過させたり遮断したりすることでパルスを発生させます。スリット数が多くなるほど分解能が高くなり、モーターの回転量をより細かく表現できます。

➁光学式エンコーダの原理(透過型と反射型)

光学式エンコーダは「透過型」か「反射型」かで、動作原理と特徴が違います。

透過型

発光素子と受光素子の間にコードホイールを配置して、光がスリットを通過したかどうかを受光素子で検出する方法です。比較的シンプルな光学経路であるため開発が容易で、信号精度も高めやすい利点があります。一方、発光素子と受光素子を対向させる必要があり、設計上の制約があって小型化しにくいのが難点です。

反射型

反射型では、コードホイールで光の反射と非反射をおこない、発光素子と同じ側に受光素子を設置して回転の情報を検出します。発光素子と受光素子を近い距離で配置できることから、薄型化や小型化に向いています。また、透過型と違って発光素子と受光素子の光学位置を決めなくて済むため、エンコーダの組立工程を減らせるのも長所です。しかし、反射光を利用する性質上、透過型よりも信号精度は落ちてしまいます。

エンコーダ付モーターとは

エンコーダ付モーターとは、回転方向や回転速度などを検出するエンコーダが組み込まれたモーターのことです。
搭載されるエンコーダは光学式の場合が多く、「サーボモーター」や「ステッピングモーター」などで採用されています。

種類と用途

サーボモーター

サーボモーターは各種のエンコーダによって回転を検出し、エンコーダから伝えられた情報に基づいてドライバで制御をおこなうモーターです。

位置決めを正確におこなえるため、精密機械や産業用ロボットの駆動装置に採用されることが多いです。工作機械や検査装置の回転テーブル、プレス装置、樹脂成形機、食品工場の製造機械や包装機械など、製造業分野で幅広く活用されています。

ステッピングモーター

ステッピングモーターはパルス信号に同期して回転方向や回転速度を制御可能なモーターです。

エンコーダ付とすることで、現在位置が把握できる様になるため、これまでサーボモーターが得意としてきた指令位置と現在位置で誤差が生まれた際に補正をかけるという「フィードバック制御」も可能となってきます。

エンコーダ付ステッピングモーターは比較的コンパクトで高精度の制御が可能なことから、産業用ロボットや搬送設備、検査装置といったFA機器で多く採用されているほか、薬剤の分包機や3Dプリンターなどにも用いられています。

長所・注意点

エンコーダ付モーターに共通する長所を挙げるとしたら、「回転の変位量に応じた出力ができる」「回転方向が検出できる」「製品仕様に合わせて多様な方式から選べる」といった点です。一方で共通する注意点は、エンコーダを付ける分、モーター全長が伸びてしまうという点です。

加えて、タイプ毎に特有の傾向も生まれます。
光学式の場合は、精度や分解能、応答性に優れていて、強力な磁場でも利用できるといった長所を得られますが、構造が少し複雑な上に環境への耐性に不安があるという注意点もあります。磁気式は構造が比較的単純でコスト面にも優れ、高い耐久性が持てる様になりますが、光学式ほどの高精度な検出は難しくなります。
尚、いずれのタイプでもアブソリュート方式の場合は、起動時に原点復帰させる必要がなくなる利点が生まれます。

エンコーダ付モーターを選択するときは、採用する製品や設備に必要な長所と許容できる注意点をよく検討することが大切です。

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