ギアボックス付モーターの働きと仕組み|高トルクと高精度な制御を実現

今回は、小型でも大きなトルクを出すことが可能となるギアボックス付モーターの働き、構造と原理を踏まえ、ギアボックス付モーターの選び方や長所・注意点、代表的な用途について解説します。

ギアボックス付モーターとは

ギアボックス(減速機)付モーターは、ギヤーモーターとも呼ばれ、歯車(ギア)機構によって回転速度を減速させたモーターです、ギアボックスと一体になることで、モーター単体より回転数を落として高いトルクが得られるように設計された駆動装置です。ブラシレスDCモーターやサーボモーター、ステッピングモーターにギアボックスを取り付け、高出力と高分解能を両立させることも可能です。

ギアボックスの働き

ギア(歯車)を用いて回転数を減速させることで、高トルクを出力するものです。ギアボックスによって適切な回転数に抑えることで制御がしやすくなる効果も期待できます。

以下、減速の仕組みを簡単に説明します。例えば、入力側となるモーター軸に8つの歯を持つギアを取り付け、24の歯を持つギアとかみ合わせて出力した場合、モーター軸の回転数と出力軸の回転数の比は3:1です。モーター軸が3回転すると出力軸は1回転するため、回転速度は3分の1になります。ギアボックス内で複数のギアを組み合わせれば回転数を100分の1以下にすることも可能です。

ギアボックス付モーターの選び方

ギアボックス付モーターの性能は、モーターとギアボックスの組み合わせで決まります。したがって、適切なギアボックス付モーターを選ぶには、モーターとギアボックス両方の種類と各特性を理解しておかなければなりません。

ギアボックスの選択

代表的なギアボックスとして、ヘリカルギア(はすば歯車)、遊星ギア、ウォームギア、ベベルギアなどがあります。

遊星ギア

平歯車(太陽歯車・遊星歯車)と内歯車で構成され、比較的コンパクトに大きな減速比が得られる歯車機構です。ふしぎ歯車は遊星ギアを発展させたもので、より大きな減速が可能になります。

ウォームギア

ウォーム(ねじれた刻みを施した歯車)でウォームホイールを回転させる歯車機構です。ウォームとホイール軸が直交しているため、動力を直角方向に変えられます。

ベベルギア

傘歯車ともいい、円すい(円すい台)の側面に歯を刻んだ歯車を用いる機構です。2つのベベルギアを組み合わせることで、ウォームギアと同様に直角方向へ回転を伝えることができます。

遊星ギアの構造・原理

ここでは、コンパクトで大きな減速比が得られる遊星ギアを用いたギアボックスについて、その構造と原理を解説します。

遊星ギアの構造

遊星ギアの名前に由来するように、太陽とその周りを公転する惑星を模した構造をしています。同一平面上に太陽歯車、遊星歯車、内歯車を配置するのが典型的な構造です。遊星歯車は2個以上あり、遊星キャリアと連結されています。遊星ギアは入力軸と出力軸を同軸上にすることができるため、コンパクトな構造で減速が可能です。

太陽歯車(サンギア)

遊星ギアの中心となる歯車です。

遊星歯車(プラネタリギア)

太陽歯車の周囲に配置します。

遊星キャリア

遊星歯車と連結される部品です。

内歯車(インターナルギア)

遊星歯車の外側にあります。

遊星ギアの動作原理

遊星ギアは、どの歯車を固定するかで動作原理が異なります。太陽歯車、遊星歯車、内歯車の1つを固定して、残り2つの歯車で入力と出力をおこなうのが基本です。回転速度は、太陽歯車の歯数と内歯車の歯数から求められます。固定する歯車によって以下の3つの方式に分類できます。

プラネタリ型

内歯車を固定する方式です。太陽歯車が入力、遊星キャリアが出力になります。

ソーラー型

太陽歯車を固定する方式です。内歯車が入力、遊星キャリアが出力になります。

スター型

遊星歯車の1つを固定する方式です。内歯車が入力、太陽歯車が出力になります。遊星歯車が太陽歯車の周りを回らないため、厳密には遊星ギアの原理ではありません。スター型では太陽歯車と内歯車の回転方向が逆になります。

太陽歯車:内歯車 = 太陽歯車の歯数:内歯車の歯数

ふしぎ歯車とは

ふしぎ歯車(ふしぎ遊星歯車機構)は、遊星ギアに差動ギアの原理を組み合わせたものです。差動ギアはディファレンシャルギア、またはデフギアともいいます。ふしぎ歯車では歯数の異なる2つの内歯車を重ね、片方の内歯車を固定させることでもう片方の内歯車が非常にゆっくりと回転します。遊星ギアの構造をほとんど変えることなく、大幅な減速を可能にする機構です。

モーターの選択

モーターの種類によってトルク特性や回転速度、制御方法が違うため、用途に合わせたモーターを選ぶことが重要です。以下に代表的なモーターの種類を紹介します。

ブラシ付モーター

ローターにブラシがあるモーターです。扱いやすさ、出力効率の良さ、価格の安さに強みがあります。ただし、ブラシが磨耗するため寿命が比較的短いのが欠点です。

ブラシレスモーター

ブラシと整流子を用いず、インバータ回路で電流方向を切り替えるモーターです。速度制御の安定性に優れ、パワーを保ちながら薄型化もできます。

サーボモーター

エンコーダで回転状態を検出し、ドライバで制御をおこなうモーターです。高精度な位置決めがおこなえるため、工作機械や製造機械などの駆動装置として広く活用されています。

ステッピングモーター

回転角度や回転速度をパルス信号によって制御するモーターです。高トルクを実現できる、位置制御がしやすい、自己保持力に優れるといった特長を持っています。エンコーダを取り付けて、さらに制御性を高めたステッピングサーボモーターもあります。

ギアボックス付モーターの長所・注意点

ギアボックス付の長所、注意点を踏まえて使うことが大事です。

ギアボックス付モーターの長所

ギアボックスのないモーターに比べて高トルクを発揮でき、慣性負荷が大きくても駆動できるのがギアボックス付モーターの典型的な特長です。起動・停止時のダンピング(モーターの揺れ)も抑制できるため、駆動制御がしやすくなります。また、負荷トルクの影響も受けにくいのも長所です。位置決めの精度を高められるだけでなく、モーターの故障防止にもつながります。

ギアボックス付モーターの注意点

ギアボックスを取り付ける分だけ、サイズが大きくなりますので、設置スペースを十分に確保することが必要です。ギアボックス付モーターは大きな減速比が得られるのが特長ですが、減速比が大きいほど伝達効率も低下しやすくなることに注意が必要です。

ギアボックス付モーターの用途

ギアボックス付モーターの用途例は以下のとおりです。

光学機器

  • プロジェクター
  • 監視カメラ
  • コピー機

医療機器

  • 血液分析装置
  • 再生医療機器
  • 血圧計

産業機器

  • 産業用ロボット
  • 流動制御バルブ
  • アンテナ調整機
  • 食品加工機
  • 半導体製造装置

建物設備

  • 電動シャッター
  • 立体駐車場

電動工具類

  • 電動ドリル
  • 電動ドライバー

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