レゾルバとは? 構造・原理・長所・注意点・用途を解説

電気自動車やハイブリッドカーのエネルギー効率を高めるソリューションとして、注目を集めているのが「レゾルバ」です。レゾルバは堅牢性や耐久性に優れるセンサで、過酷な環境下でも長期にわたってモーターの回転角を検出することができます。今回は、レゾルバの基礎知識から構造と原理、長所・注意点、用途までを解説します。

レゾルバの基礎知識

モーター用には様々なセンサやエンコーダがあり、レゾルバもその1つです。ここでは、レゾルバとはどんな仕組みで、どのような種類があるのか、また、ほかのエンコーダとどういった点が異なるのかを説明します。

レゾルバとエンコーダの違い

レゾルバもエンコーダも、ローターの回転角を検出して電気信号を出力する角度変位センサという点は同じですが、主に3つの違いがあります。1つ目は、エンコーダはデジタル信号を出力するのに対し、レゾルバはアナログ信号を出力する、という点です。デジタル回路へ接続する場合にはデジタル変換が必要です。

2つ目は、精度面。光学式エンコーダなどはレゾルバよりも高精度です。3つ目は対環境性能面。レゾルバは振動や衝撃、高温、低温の影響がほとんどなく、劣悪な環境条件でのモーター制御アプリケーションに対応できます。

レゾルバとは

レゾルバはモーターを制御するための角度変位センサで、測定した回転角度をアナログ信号として出力する仕組みです。レゾルバを用いたブラシレスDCモーターやステッピングモーターは、出力されたアナログ信号を処理するマイコンによって高精度に制御できます。モーターの回転角度を検出し、回転速度の把握をより精密におこなうことが求められる用途でレゾルバが活躍しています。

レゾルバの種類

レゾルバは電磁誘導を利用したトランスと同じ原理を応用しています。レゾルバは構造や出力方式によって分類できますが、主流になっているのは「2相励磁1相出力」と「1相励磁2相出力」です。

2相励磁1相出力

マイコン内蔵のカウンタを使って比較的簡単な回路でも回転角度を検出できます。レゾルバをつなぐケーブルが長いために位相ずれの影響が起こる場合には、補正が必要になることがあります。

1相励磁2相出力

2相励磁1相出力に比べると、位相ずれと補正に注意しなくてすむのが長所です。ただし、角度変換の信号処理は複雑になります。

ほかに「2相励磁2相出力」のレゾルバもあります。また、ブラシのない「ブラシレスレゾルバ」や、ローターのコイルをなくした「VR型レゾルバ(可変リラクタンス型レゾルバ)」も開発されてきました。VR型レゾルバは、シンプルな構造ながら高精度かつ高分解能な位置検出が可能です。

レゾルバの長所・注意点

モーターやセンサを選定する際には長所と注意点の比較が大切です。ここでは、レゾルバの特徴を交えながら長所・注意点を解説します。

レゾルバの長所

レゾルバには以下のような長所があります。

構造がシンプルでコンパクト化できる

レゾルバはコイルと鉄心のみの構造であり、ロータリーエンコーダなどよりもシンプルです。コイルがセンサの役割を果たすため、コンパクトに組み込むことができます。

ノイズや振動・衝撃に強く、対環境性に優れている

レゾルバには光学部品や電子部品がモーター内部に組み込まれておらず、ノイズや振動、衝撃による検出精度への影響がほとんどありません。

動作温度範囲が広い

レゾルバは一般的に広範囲な温度域で使用可能です。メーカーの仕様にもよりますが、氷点下あるいは100℃以上の空気環境でも利用できます。

レゾルバの注意点

レゾルバの代表的な注意点は次のとおりです。

デジタル変換の処理が必要

レゾルバのアナログ信号をデジタル変換するにはR/Dコンバータが必要で、その処理も複雑になりやすいです。

レゾルバの用途

近年では、VR型レゾルバが電気自動車やハイブリッドカーにも応用されています。走行制御や電動パワーステアリングなどの精密制御を可能にするとともに、省電力化にも寄与しています。
その他のレゾルバの主な用途は産業機器で、堅牢性や、過酷な環境の中で精密制御が求められる工場内の産業用ロボットやFA機器のほか、屋外で使用される鉱山機械などに利用されています。
また、産業機器に用いられるサーボモーターやステッピングモーターの様に、正確な位置決めを可能にするために、回転数などを検出してフィードバックする目的で使用されることもあります。

レゾルバの構造と原理

レゾルバはトランスと同様に電磁誘導の原理を用いています。大まかにいえば、励磁コイルと検出コイルの間に生じる磁界変化を利用して、回転角度を検出する仕組みです。ここでは、レゾルバの構造と原理を解説します。

レゾルバの構造

レゾルバは通常のモーターと同様にステーター(固定子)とローター(回転子)を持っています。1相励磁2相出力の場合、ステーターにはリファレンス信号を加える1次側巻線と、R/Dコンバータにつながる2次側巻線が配置されています。ローターに配置するのは中継用の巻線のみです。1次側巻線のリファレンス信号がローターの中継用巻線に誘導され、ステーター上に90°ずらして配置された2つの2次側巻線に、ローターの角度に応じた起電力が発生する構造になっています。

レゾルバの原理

モーターの回転によって1次側巻線と2次側巻線の相対位置が変化したときの交流電流値を測定し、回転角度のずれ(θ)を検出するというのがレゾルバの原理です。1相励磁2相出力のレゾルバでは、1次側巻線にリファレンス信号としてV1 = Va sin ωt を入力すると、2つの2次側巻線にはV2a = Vb sinθ sinωt、V2b = Vc cosθ sinωt の出力信号が得られます。これらを信号処理・演算処理することによって、θを求めることができます。

ローターの形状によって出力信号の倍率を調整することも可能です。ローターがステーターと同心円の形状になっている場合はローター1回転に対する出力は等倍ですが、楕円状にすると2倍、三角形にすると3倍の出力になります。一般には、倍率が大きくなるほど角度検出の精度も高まります。

レゾルバの信号処理

レゾルバから出力されるアナログ信号をデジタル信号で取り出すために、アナログ信号は、R/Dコンバータでコンピュータやマイコンで演算処理できるようにデジタル変換されます。サーボモーターや自動車走行用モーターに使われるレゾルバでは、PID(フィードバック)制御による演算処理が一般的です。

レゾルバセンサ搭載・ハイブリッド型ステッピングモーターの事例

ミネベアミツミ製のレゾルバセンサ搭載・ハイブリッド型ステッピングモーター。ルネサスエレクトロニクス製MCUならびに専用RDC-ICを用いた事例になります。これまでのステッピングモーターではできなかった、画期的な事例を説明します。