MEMSと従来の半導体との違い
「MEMS」は構造が立体的で可動部を有していることが、集積回路をはじめとした通常の半導体との大きな違いです。
MEMSは半導体と機械構造を組み合わせて誕生し、産業の発展に寄与してきました。ここでは集積回路とMEMSの違いや、MEMSの歴史について紹介します。
集積回路(IC・LSI)との違い
MEMSやIC・LSIといった集積回路は同じ半導体製品に分類されます。MEMSは基本的に1つの基板の上に電子回路と機械要素を持った立体構造のデバイスです。
一方でICやLSIは機械要素をまったく持たず電子回路を集積化したもので、MEMSと比較してもトランジスタなどの素子数が圧倒的に多く、電気信号を処理することに特化しています。
ヒトに例えて言うと、IC・LSIが情報機器の頭脳を担っているとすれば、MEMSは受け取った情報を脳に伝えるセンサー(神経)や、情報をもとに外部に働きかけるアクチュエーター(筋肉)のような働きをしているといえます。
アナログ半導体とデジタル半導体の違いとは?
半導体には大きく分けてアナログ半導体とデジタル半導体の2種類があります。この2つの違いには、アナログ半導体は連続的な電気信号の処理や制御をし、デジタル半導体は電気信号の「0、1(ありなし)」を判断するという違いがあります。
アナログ半導体とは
アナログ半導体は主に人と機械を結ぶインターフェースとして活用されており、音量・光量・温度などのような、連続したアナログ情報を読み取って、きめ細かく制御・処理します。
このようなデータの多くはアナログであり、電気回路上ではアナログ回路が不可欠です。しかし、アナログ回路は近くにあるノイズの影響を受けて数値に狂いが生じたり、回路自身がひずみを発生してしまうといったデメリットがあります。
デジタル半導体とは
デジタル半導体は、0か1のみを扱うデジタルの処理です。最大の特徴は、ハードウェアだけでなくソフトウェアのような数値的な処理ができる点です。ソフトウェア側の処理によって柔軟に機能の追加や修正ができ、簡単に高速通信やデータの保存・圧縮、さらに誤りの訂正などを行うことができます。
一方でサンプリングしたデータ(“0”か“1”)しか扱えないという面もあるため、狙いどおりの機能を実現するには、連続した数値を扱えるアナログ半導体との組み合わせが重要だといえます。
アナログとデジタルの融合
別の働きをもったアナログ半導体とデジタル半導体ですが、同一パッケージ内で融合させることにより、MEMSセンサーで得たアナログデータをデジタル変換することも可能です。また、使用用途やご要求により、アナログデータをアナログのまま出力することも可能です。
ミネベアミツミではリセットICやLDO、保護ICといったアナログ半導体をはじめ、EEPROM、マイコンなど内蔵したアナログ/デジタルを混載したアナデジ半導体も扱っています。
MEMSの歴史
MEMSは集積回路技術を発展させたマイクロマシニング技術と呼ばれる微細加工技術により、チップ上に回路および構造体を形成しています。
MEMSが登場する以前は、電子回路とは別にサイズの大きなセンサーやアクチュエーターを組み合わせて使用していました。部品が大きいと、必然的に製品サイズも大型化してしまう上、製造にかかる手間やコストがあがってしまいます。
しかし、MEMSの登場により製品の小型化ができ、さらに量産性の高い部品が製造できるようになったことで、効率性も大幅に向上しました。
「半導体とマイクロメートルサイズのセンサーやアクチュエーターといった機械構造が組み合わさったもの」と聞くと、ハイテクで最近になって登場したもののように感じられます。しかしその歴史は古く、諸説はあるものの、1960年代に確立された結晶異方性エッチングや陽極接合等の基本技術がベースとなっています。
1970年代頃には圧力センサーやガスの分析装置(ガスクロマトグラフィ)が開発されました。さらに1980年代に入ってからはパソコンの普及にともなうインクジェットプリンターの需要拡大により、インクを吐出するヘッド部分やプロジェクターの部品としてMEMSの技術が進歩し、普及していきました。
最近ではスマートフォンの登場によって、マイクや加速度センサーなどに活用されることで、ますます存在感を増しています。