無潤滑型PTFEライナー
PTFEライナー(PTFE LINER)を使用した滑り軸受は、比較的新しい製品で、1950 年代にはじめて生産されました。
このPTFEタイプのものは、無潤滑と呼ばれているとおり、定期的な給油を必要としません。すなわち自己潤滑性をもつPTFEライナーを使用しているためです。またPTFEライナーは、無潤滑としてだけではなく、耐摩耗性にもすぐれた特性をもっています。
PTFEライナー
PTFEは、(Poly Tetra Fluoro Ethylene)の頭文字をとったもので、このPTFEレジン(PTFE RESIN)は化学的に安定していて、耐熱性、絶縁性もよい特性があります。更に288 ℃以下では、摩擦係数が0.03 ~ 0.05 と良好ですが、引張強さは34N/mm2{3.5kgf/mm2} 程度です。この機械的強度を補うため通常引張強さ343N/mm2{35kgf/mm2} のPTFEライナー(PTFE LINER)が軸受けに用いられます。
このPTFEライナーは、PTFEファイバーとバックアップ材としてグラスファイバー(GLASS FIBER)や他の合成繊維とを混紡しフェノリックレジン(PHENOLIC RESIN)を含浸させたものです。このPTFEライナーの裏面を熱硬化性接着剤を用いて、金属面に接着させます。これをキュア(CURE)といい、キュアされたPTFEライナーは荷重性能が高く、静荷重下で482N/mm2{49.2kgf/mm2} まで、低速揺動下では220 ~ 275N/mm2{22.5 ~ 28.1kgf/mm2} までの使用に耐えることができます。また接着力は 3.5N/cm {2LBS/INCH} 以上※1と強く通常の使用に耐えうる接着力を有しております。そのため、特に動荷重下での性能は、メタルタイプのものに比べてすぐれているといえます。
※ 1. AS 規格の要求値
PTFEライナーの一般特性
摩擦係数は0.03 ~ 0.15 程度ですが、荷重の増加にしたがって減少し(図1)、また低温領域では増加します。(図2)
PTFEライナーは、グリース、オイル、水分等の影響を受けて、わずかに膨潤することがあります。 
 使用前のスフェリカルベアリングではこのためトルクアップの原因となりますが、荷重性能が低下することはありません。また、酸やアルカリの雰囲気で使用しますとフェノリックレジンが侵され、剥離等が発生するためご注意下さい。なお、グリースやオイルの塗布は、効果がない上にコンタミネーションを巻き込み、異常磨耗の原因となるため避けて下さい。
PTFEライナーは荷重により異なりますが使い始めて500~1000サイクルで初期摩耗が起こります。 
 しかしこれを過ぎると摩耗は徐々にしか進行しなくなります。この摩耗許容値はAS 規格で0.152mm 以下と規定されています。この許容値はユーザーの使用上の精度要求により異なりますが、使用上問題がなければ0.150mm 程度を摩耗許容限界としております。また、PTFEライナーの摩耗寿命を延ばすことを目的として、ボールにクロムめっき等の表面処理をすることがありますが、それら表面処理の有効性は社内試験でも確認されています。
以上一般的なライナーシステムについて説明しましたが、特殊用途にご使用頂く場合、表4 以外のライナーシステムもありますので、ロッドエンド販売推進部へご相談下さい。
図1 - 荷重による摩擦係数の変化

図2 - 温度による摩擦係数の変化

スクロールできます
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         X-1118  | 
    
         X-1276  | 
    
         X-1276F  | 
    
         X-1820  | 
    
         L-1390  | 
    |
|---|---|---|---|---|---|
| MIL、SAE規格 | 
             AS8942  | 
        
             AS81820  | 
        |||
| バックアップ材 | グラスファイバー | ポリエステル | ポリエステル | ナイロン | グラスファイバー | 
| 厚さ | 0.25 ~ 0.29mm | 0.30 ~ 0.34mm | 0.34 ~ 0.38mm | 0.34 ~ 0.38mm | 0.30 ~ 0.36mm | 
| 温度範囲 | -54 to +121 ℃ | -54 to +121 ℃ | -54 to +121 ℃ | -54 to +163 ℃ | -54 to +329 ℃ | 
| 静荷重性能 | 482N/mm2 {49.2kgf/mm2}  | 
    482N/mm2 {49.2kgf/mm2}  | 
    482N/mm2 {49.2kgf/mm2}  | 
    541N/mm2 {55.2kgf/mm2}  | 
    482N/mm2 {49.2kgf/mm2}  | 
    
| 動荷重性能 | 220N/mm2 {22.5kgf/mm2}  | 
    220N/mm2 {22.5kgf/mm2}  | 
    220N/mm2 {22.5kgf/mm2}  | 
    275N/mm2 {28.1kgf/mm2}  | 
    ※1 | 
| 摩擦係数 | 0.03 ~ 0.10 | 0.03 ~ 0.10 | 0.05 ~ 0.15 | 0.05 ~ 0.15 | 0.03 ~ 0.10 | 
| 摘要 | 最も広く用いられているライナーシステム | 振動荷重性能にすぐれレーシングカーに適す | 動荷重性能にすぐれる | 高温特性・動荷重性能にすぐれる | 高温特性にすぐれ、ジェットエンジン用として使用 | 
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            ※1使用条件により異なります。
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            ※2タイプにより異なります。