組立
ベアリングの取扱いは、ベアリングの性能および寿命等に大巾な影響を与えるため、十分な注意が必要です。
PTFEタイプスリーブの内径とシャフトとのはめあい
揺動運動の場合は0 ~ 0.038mm のすきまばめ、回転運動の場合は、0.051 ~ 0.102mm のすきまばめを標準とします。
ハウジングとのはめあい
PTFEタイプスリーブの場合は0.013 ~ 0.051mm のしまりばめ、スフェリカルの場合は - 0.013 (しまりばめ) ~ + 0.013mm (すきまばめ) の中間ばめを標準とします。特にスフェリカルの場合には、過度のしまりばめはトルク値やすきま値を変化させ、また振動荷重のかかるところでは過度のすきまばめはフレッティングコロージョンの原因となるため注意が必要です。
シャフトの表面のあらさ
0.2μmRa 以下とします。これより粗くなるとスリーブの寿命が著しく低下します。硬度は50HRC 以上とし、厳しい使用条件のもとではクロムメッキをすれば効果的です。また、PTFEタイプのスリーブはグリース等の潤滑剤を使用しないため、シャフトは防食を考慮する必要があります。
ライナー面にシャフトを挿入する場合
シャフトの先端はR
            面取か15°面取にします。(図19、20)
シャフトの先端にバリが出ていたり、シャープエッジの場合にはライナー面を傷つけます。
またライナー面にボルトを挿入するときはねじ部でライナー面を傷つけない注意が必要です。
ハウジングの口元にバリが出ていたりシャープエッジの場合には軸受の外周を傷つける原因となるため、ハウジングの口元はR
            面取仕上げとします。また、ハンマーの使用等の軸受に衝撃を与える方法でハウジングに挿入することは避けて下さい。
                            図19 - R 面取
                            図20 - 15°面取
スリーブをハウジングに挿入する場合
図21 に示す方法で行えば適切に挿入できます。この場合、挿入治具のガイドピンは少なくともスリーブ巾より長くします。
            図21 - スリーブの挿入方法
スフェリカルをハウジングに挿入する場合
図22 に示す方法で行えば適切に挿入できます。この場合、決してボールを押して挿入してはいけません。特に、スフェリカルとハウジングがしまりばめの場合にはスフェリカルをハウジング内径に対しまっすぐにしてから圧入します。傾いたまま無理に圧入すると、スフェリカルを簡単に傷つけてしまいます。
            図22 - スフェリカルの挿入方法
V ステーキング (V-STAKING:GROOVE STAKING)
スフェリカルのレース端面にステーキング用のV 溝を切り、このV
            溝の外側をステーキング治具でハウジング側に倒してスフェリカルを保持する方法で、かしめ治具(図23)を使用します。
            ステーキング荷重は表21
            を参考にし、ステーキング後の外観(図25)やアキシャルプルーフロード性能等を確認しながら調整します。荷重のかけ過ぎは、ベアリングの機能を損ない寿命を低下させるので十分ご注意ください。ステーキング後、レースとハウジング面取りとの間にわずかなすきまが残ることがあります。このすきまは0.15mm
            以下であればアキシャル荷重性能に影響を与えません。(図23)
            V ステーキングは、他の方法に比べて軸受けの機能に与える影響は少なく、高いアキシャル荷重性能が得られます。
            また、軸受けの交換が必要になったとき、ハウジングに致命傷を与えることなく軸受けだけを交換できます。
            図23 - V ステーキング
            øE(ステーキング治具先端径)= øA + 0.1
            øA:V 溝谷径
            øC(ハウジング面取り径)= øD + (T - H + 2P)
            øD:ハウジング内径 orスフェリカル外径
            T:ハウジング巾
            H:レース巾
 P:V 溝深さ 
スクロールできます
| V
                            溝 タイプ  | 
                        V 溝巾 X (mm)  | 
                        ステーキング荷重 (N){ kgf } | |
|---|---|---|---|
| スチールレース (30-35HRC) | Al-Bzレース | ||
| A | 0.6 ~ 1 | 2647 × D { 270 × D }  | 
                        1569 × D { 160 × D }  | 
                    
| B | 1 ~ 1.4 | 3138 × D { 320 × D }  | 
                        1961 × D { 200 × D }  | 
                    
| C | 1.6 ~ 2 | 4412 × D { 450 × D }  | 
                        2745 × D { 280 × D }  | 
                    
D:スフェリカル外径寸法 (mm) 
                         | 
                    |||
ボディステーキング (BODY STAKING:RING STAKING)
ハウジングにステーキング治具をあてハウジングをレース面取り側に倒すことによってスフェリカルを保持する方法で、かしめ治具(図24)を使用します。
            ボディステーキングは、V
            ステーキングと同様高いアキシャル荷重性能が得られますが、ハウジングで軸受けをかしめるため軸受けのトルクやすきまに影響を与えることがあり、注意が必要です。また、軸受けの交換が必要になったとき、通常ハウジングとも交換する必要があります。その他、ハウジングの材質にも影響を受けます。
            V ステーキングやボディステーキングは大型プレスを必要としますが、比較的簡易な治具でできるステーキングとして、ローラーステーキング(ROLLER
            STAKING)、菊型パンチステーキング(CIRCUMFERENTIAL-LINESTAKING)、さらには接着剤による方法等があります。しかし、ローラーステーキングを除いてこれらの方法はV
            ステーキングやボディステーキングに比べて、安定したアキシャル荷重性能が得にくいと言えます。
            図24 - ボディステーキング
øE(ステーキング治具先端径) = øD +(1.2 ~ 2.2) øD:ハウジング内径 or スフェリカル外径
            
            
            図25 - ステーキング外観:ツールの当たった跡
            図25 - ステーキング外観:ツールの当たった深さ